「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ!」
──私は放送が終了しても中々動けず、放送席でボーッと天井を眺めていた。
あの実況が多くの人に伝わったのは、冨田選手が着地でピタリと
止まってくれたことがすべてだ。冨田選手がもし一歩でも二歩でも
動いていたら、私が『栄光への架け橋だ』と言ったことは誰の耳にも残らない。
もちろん着地を失敗しても金メダルには変わりないが、冨田選手がピタッと
止まったことによって、それまでの体操ニッポンの歴史、ファンの熱気、
テレビを見ている人々の祈り、体操協会の指導者の願いが、まさにあの一点に
ピタっと集まった。それによって私のコメントに命が宿ったのだと思う。
そして点数が出たタイミングで八年越しの言葉を言い忘れることなく
万感を込めて口にした。「体操ニッポン、陽はまた昇りました」
元NHKアナウンサー 刈屋富士雄 著書『今こそ栄光への架け橋を』より
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